いくつかの道具とあらかじめ用意した形式の中で半ば即興で行ったパフォーマンス。前日の健康診断から上演当日まで飲食をしていないという話から始まる。話しながら骨ガム(牛皮にミルクを染み込ませ乾燥させた犬のおやつ)を「ボール」、スポドリを「ピン」としてボーリングを始め、倒したら飲めるという縛りゲームが始まる。飢えていた自分はカンパンとそれに混入した唐辛子を背後にバレないようにこっそり食べる。いつしか自分は犬のようになっていき、骨ガムを口で投げる訓練へと移行していった。
この上演の形式は相互監視と不均衡な情報の共有によって成立することを目標にした。
客席を左右に分け、それぞれ同時に違う内容に見えるパフォーマンスを行った。対面座席のため鑑賞者同士がパフォーマー越しに互いを見合うため、一方の客席で笑いが起きたとして、もう一方はなぜ笑っているかわからない。見える見えないのストレスが客席のもどかしさを生み、鑑賞者自身の縛りを際立たせる。唯一客席を立って鑑賞した時だけ全体の内容がわかるようになっている。この正面性のない出来事に対し、鑑賞者はブラックボックス的な鑑賞ルールを採用するのか。それともホワイトキューブ的な鑑賞ルールを採用するのか。